第2回『天外者』

映画コメンテーター、有村昆さんが話題の映画作品の見どころを語る「upPLUS online」の連載第2回。今回は、三浦春馬さん主演の歴史群像劇『天外者』に出演する、森川葵さんがスペシャルゲスト☆ アリコンがその見所をインタビューしました♪

演技を褒めてくれた三浦春馬さんに気持ちを伝えることの大事さを学びました

有村 今、世界中がコロナウイルスで大変な状況ですが、『天外者』はそんな激動の時代には強い信念を持つリーダが必要だと、そんな思いにさせられる、今の時代にマッチした作品だと思います。森川さんの役どころは、主人公の五代友厚にきっかけを与える遊女の「はる」役ですが、遊女役は初めてですか?

森川 きちんと遊女の役というのは初めてで、参考にと『赤線地帯』(1956年、溝口健二監督)を観ました。

有村 おお、いわゆる「ザ・遊女もの」ですね! 遊女の所作は独特ですが、どんなところに気をつけて演じられましたか?

森川 時代劇には何度か出演しているんですが、撮影の前に京都の撮影所で、長い着物の裾のさばき方などを教えていただきました。

有村 三浦春馬さん演じる五代友厚が思いを寄せる女性の役ということで、三浦春馬さんと一緒のシーンも多かったと思いますが、三浦さんとは演技の話などをされたんでしょうか。

森川 お互いに演技プランを出し合ったという感じではなかったんですが、カットがかかるたびに春馬さんが「今のお芝居、素敵だったよ」とか声をかけてくださったりして、演技をしていく中で確認していく感じでした。

有村 今、三浦春馬さんへの思いは?

森川 春馬さんは何かあるたびに声をかけくださって、私のお芝居が終わったら、「今の良かったよ」という風に褒めてくださるんです。人のことを褒めて伸ばすのが上手な方だなって思いました。人を褒めるのは意外と難しいと思うんです。
私は「いいな」と思っても、それを言うのをためらってしまうんですが、春馬さんに褒められてすごくうれしかったし、春馬さんの言葉がすごく心に残っています。せっかく、一緒にお芝居をさせていただいて、そういう春馬さんの良いところを体験させていただいたので、私も「いいな」と思ったら、ちゃんと人に伝えていこうと思いましたね。

天外者 森川葵

森川葵さんが演じるはるは、長崎丸山遊郭の遊女。自由を夢見るはるの思いが五代の志に影響を与える、やがて2人は引かれ合っていく。危機に陥った五代を助けるため、自ら過酷な運命を歩む。

新しい年に何かを始めようと思っている人に観て欲しいです

有村 田中監督はファーストテイクのパッションを大切にするタイプでしたか? それとも、何度も粘るタイプでしたか?

森川 場面にもよると思います。1テイクで済ませる場面もあれば、例えば、一番最初にはるが出てくる橋の上のシーンでは「いろいろな表情を見てみたい」と、いろいろなパターンを試してくださったり。

有村 あのシーンは伏線になっていて、表と裏というか、いくつも意味が込められていますね。

森川 強気な表情で橋から立ち去るのか、五代様のおちゃめなところを見てフフフっと微笑みながら立ち去るのか、それとも、自分の置かれた状況を思い詰めた表情に持っていくのか。それぞれいくつもパターンがあって、どれも何回かチャレンジさせていただきました。最終的には田中監督に選んでいただいて、五代に微笑みながらも、ふと、自分が置かれている状況を思い出して、自分の中に閉じこもってしまう、という方向になりました。

有村 はるの複雑な思いが伝わる良いシーンでしたね。ボクは他にも、はると五代が崖の上から海を見るシーンがとても印象的でした。森川さん自身が印象に残ったシーンはどこですか?

森川 あの崖の撮影場所はけっこう遠くて、たどり着くまでも大変だったんです。あと、ドローンを使った引き画の撮影もあって、スタッフさんが映り込まないようにスタートのかなり前から遠くへ退避していたので、崖の先に春馬さんと私が2人きりになっていたんですよ。私もこのシーンが印象に残っていて……。はるは病なので、少し食事の量を控えて撮影に臨んだんです。

有村 ロバート・デ・ニーロみたいなアプローチで、すごい役作りです! 読者の方には、ぜひ、このシーンを見ていただきたいですね。『upPLUS』読者は、はるのメイクも気になると思うのですが……。

森川 はるが遊女としてお店で五代と対面するシーンは白塗りをしていて、ふわっと明るい感じになっているんですが、赤いリップのつけ方がすごく独特なんです。唇の真ん中の方にだけ濃くつけているんですけど、それがすごくかわいくて。昔の遊女のメイクなんですが、今やってみても素敵だと思います。

有村 確かに、とてもかわいくて、現在から見ても違和感がなかったです。森川さんと同世代の女性にとって『天外者』の見どころはどこにありますか?

森川 はるは遊女でありながら文字の読み書きができたり、本が好きで世界に興味をもっていたり、時代の先を行っている女性で、新しい生き方を見せてくれる女性なんです。そういうところも、女性がどんどん社会進出している現代にも合っていると思いますし、何かやりたいことがある人や、新しい年に何かを始めようと思っている人に観ていただけたらと思います。

有村 12月は、『ワンダーウーマン 1984』を始め、強い女性の映画が多いイメージ。『天外者』も、主人公を支える女性たちに通じるものがありますね! 森川さんは、新しく始めたい事がありますか?

森川 最近はお芝居だけじゃなく、バラエティやラジオなど、いろいろなことにチャレンジさせていたいて、仕事の幅が広がって来ていているんです。でも、それはまだチャレンジという段階なので、その広げているものを定着させていきたいと思っています。

森川葵

もりかわあおい
1995年6月17日生まれ。愛知県出身。
2012年女優デビュー。2020年は映画『魔女見習いをさがして』『リトル・サブカル・ウォーズ -ヴィレヴァン!の逆襲-』『嘘八百京町ロワイヤル』に出演。2021年は『映画 賭ケグルイ Part2(仮題)』の公開が控えている。

Check!『天外者』

『天外者』

江戸末期、薩摩藩士の五代才助[後の友厚](三浦春馬)は、誰もが夢見ることができる国を造るため、同じ志を持つ者たちと激動の時代を駆け抜ける。すさまじい才能の持ち主=天外者[てんがらもん]と呼ばれた、幕末・明治初期の実業家の生きざまを描く歴史群像劇。

【監督】田中光敏
【出演】三浦春馬、三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵、蓮佛美沙子 、生瀬勝久
全国にて公開中
© 2020 「五代友厚」製作委員会

撮影/カキモトジュンコ(パーシモン)スタイリング/道端亜未 ヘア&メイク/牧田健史 文/土屋文宏

Author Profile

有村 昆
有村 昆映画コメンテーター
映画コメンテーターとして、数々のTV、イベントなどで活躍中。BayFM『The BAY☆LINE』、TBS『アカデミーナイトG』、AmebaTV『ふわっと教えてアリコン先生』などに出演中。YouTube『有村昆のシネマラボ』を公開中。

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