存在感ある演技で、近年大躍進している髙石あかりさん。
自身と演じた役柄の「境界線が曖昧だった」と言うほどのめりこんだという、出演映画『夏の砂の上』について聞きました。
Profile
2002年12月19日生まれ、宮崎県出身。
2019年より俳優として活動をスタート。
2025年は映画『遺書、公開。』『ゴーストキラー』『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』、ドラマ『御上先生』『アポロの歌』などに出演。
後半は、Netflix『グラスハート』のレギュラー出演、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』の主演が控える。
撮影中もオフも、どの瞬間も優子であり髙石あかりだった
松田正隆原作の傑作戯曲『夏の砂の上』を、気鋭の演出家・玉田真也の監督・脚本で映画化。
髙石あかりさんが演じたのは、オダギリジョーさん演じる、息子を亡くした喪失感から時間が止まり、妻に見限られた主人公・小浦 治のもとにきた17歳の姪・川上優子。
「優子のセリフは少ないのですが、その分発する言葉が突出しているんです。
大人びているときもあるけど、子どもっぽいときもある。そして時には限りなく優しかったり……。
いろんな要素を持ち合わせているので、キャラクターをつかむのは難しかったのですが、とても魅力的でした」
玉田監督とは優子をどう演じるべきかを、話し合ったのだそう。
「奔放な母親のもとで、それまでもいろんなところにあずけられて育ってきたであろう優子は、とても繊細な女性だと思ったんです。
そう思って挑んでいたら、台本読みのときに監督に『もっと明るくていい!』と言われたんです。
『あれ、明るくていいんだ』って。私は結構明るい人間なんで、そう言っていただいて一気に優子が身近になった(笑)。
ありのままでいいんだと思ったら楽になりました」
撮影中は「カメラの存在を忘れてしまう」ほど、優子と同化していったのだとか。
「ああしよう、こうしようと一切考えずにただ優子として撮影に挑んでいて、撮影中も合間もオフも、ずっと優子であって髙石あかりだったと思います。
こんな不思議な感覚は初めてでした」
観終わったあとの感想は──「どうしよう、すごい作品だ」
ロケが行われたのは原作者である松田正隆さんの出身地、長崎県。
坂の多い美しい街並みが、観る者の臨場感を高める。
「食事がとてもおいしくて、撮影期間中に通ったお店もあります。
私、ご飯を食べているときが一番幸せなんです。
昨日の夜も『朝になったら朝ご飯を食べるのが楽しみ』と思いながら寝ました。
撮影期間中も、ご飯を食べているときは唯一、髙石あかりのままだったかもしれないです(笑)」
自分と優子を曖昧に過ごしていた撮影期間。できあがった作品を観たとき、自身にはどう映った?
「自分の出演作を見て、こんなに“自分じゃない”と感じたのも初めてでした。
劇中にいたのが、あまりにも優子で。観終わってすぐに家族に連絡したんです。『どうしよう……、すごい作品だ』って(笑)」
「家族や友だちにもぜひ観てほしい!」と力を込める髙石さん。
最後に改めてこの作品の魅力を聞くと──
「優子という愛を知らない少女が、いろんな人と出会うことで、愛という存在に近づいて成長していきます。
オダギリジョーさん演じる治や、松たか子さん演じるその妻の恵子など、彼らを見てたくさんのことを感じられるので、いろんな年代の人に刺さる作品だと思います。
長崎の美しい景色とともに、ぜひスクリーンで楽しんでいただければうれしいです」
『夏の砂の上』

©2025 映画『夏の砂の上』製作委員会
夏の砂のように乾き切った心に希望の芽を見つける再生の物語
雨が降らない、からからに乾いた夏の長崎。
幼い息子を亡くした喪失感に苛まれる小浦 治(オダギリジョー)は、妻の恵子(松たか子)と別居中だ。
そこに妹の阿佐子(満島ひかり)が17歳の娘・優子(髙石あかり)を連れて訪ねて来る。
阿佐子は博多の男の元に行くために、優子を預かって欲しいと言う。
こうして突然、治と優子の同居生活が始まるが……。
7月4日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開
【監督・脚本】玉田真也
【原作】松田正隆(戯曲『夏の砂の上』)
【出演】オダギリジョー、髙石あかり、松たか子、森山直太朗、高橋文哉、篠原ゆき子/満島ひかり、斉藤陽一郎、浅井浩介、花瀬琴音、光石研
※本記事はアッププラス2025年7月号より一部抜粋して掲載しています
撮影/屋山和樹
スタイリング/金田健志
ヘア&メイク/住本 彩
取材・文/山西裕美(ヒストリアル)