【佐藤 健】30代も今までと変わらず、役と向き合っていくだけです

国内外60以上の映画賞受賞歴のある、白石和彌監督の最新作『ひとよ』。
15年前のある〝一夜〞で、運命が変わってしまった家族たちを描いたヒューマンドラマで、東京でフリーライターとして働く、稲村雄二を演じる佐藤健さん。
作品にどう向き合ったかを、お聞きしました。

何も考えずに現場に行って自然に演じられた

――『ひとよ』は家族を描いた物語です。家族というのは良くも悪くも自分自身のベースになっている場所だと思うんですが、佐藤さん自身にとって家族はどんな存在ですか?

うちは他の家族と比べて、あまり距離が近い感じじゃないです。でも、その重くない感じが僕にとってはすごくラクな距離感で。なので、いい意味でありがたいところだと思っています。とはいえ、もちろん帰ったときには、やっぱりホッとしますね。

―― 今回の物語は家族を中心に展開されますが、フリーライターである次男・雄二役の佐藤さん、お兄さん役の鈴木亮平さん、妹役の松岡茉優さんが3人でタバコを吸うシーンはきょうだいの関係性が自然と出ていて、とても素敵でした。きょうだいの空気感を作るために何か工夫はしましたか?

空気感を作ることは特になかったのですが、撮影期間中は3人で普通に話をしましたね。鈴木さんは「世界遺産マニア」、松岡さんは「ハロー!プロジェクト」マニアなんですよ(笑)。撮影当時ちょうど映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開していて、松岡さんが『アベンジャーズ』にもハマっていたんですね。だから、ハロプロか『アベンジャーズ』か世界遺産の話を主にしていました(笑)。でも、そんなふたりを見て、僕は何かのマニアぶりを発揮するのはやめようと思いました(笑)。

―― その微笑ましいきょうだいのシーンに対し、緊迫感があったのが田中裕子さん演じる母親・こはるとのシーン。こはるは激しいDVから子供たちを守るために夫を殺害し、警察へ出頭。15年後に帰ってきます。でも、夫殺しの母親を持ったきょうだいは、その15年間に誹謗中傷を受け続け、こはるに対して複雑な思いを抱いていた。その蓄積した思いを佐藤さん演じる雄二はこはるにぶつけますが、あのシーンを演じるにあたり、大切にしたものやこだわった部分はありましたか?

ないです。本当に何も考えずに現場に行って、何も考えずにやっただけなんです。裕子さんの芝居をただただ受けて、全部がそこで生まれたといいますか。なので、普通のことをしている感覚しかなかったです。

無精ひげにノーメイク見た目の作りこみはなし

―― 気負っていないという意味では、今回の佐藤さんのビジュアルもそうですよね。無精ヒゲですし、すごく生っぽいので。

ビジュアル面に関しては一切作り込んでいないです。ただ、これは僕の中での白石作品に対するイメージなんですけど、白石作品に出演するなら線が太いほうがいい気がしていたんです。それは『ひとよ』の話をいただく前から白石作品を観てなんとなく思っていたことなんです。線が太くて重心が低い、重みのある芝居のほうが白石組にはマッチするなと感じました。なので、この映画を撮っている間は、体重も今よりは何キロか増やしました。ヒゲに関してもビジュアルの作り込みが目的なのではなく、なんとなく雄二はそういうことを気にしてない人なんじゃないかなと思ったのでそうしただけです。今回は髪型も現場で後ろになでつけただけですし、メイクも全くしていないです。

――ヒゲのはやし方にこだわったりは?

ないです。こう生えただけ(笑)。1週間とか2週間くらいヒゲを剃らずに放置しないと、雄二の状態にはならないんですよ。初めてそんなに放置したので、僕自身も「生やしたらこうなるんだな〜」と思いました(笑)。

―― 『upPLUS』読者にエールを!

コスメやメイクに研究熱心なのは素敵です!
フォーマルなドレスにまっ赤なリップ、なんていいですね。
あとは女性のすっぴんも可愛いと思うので、スキンケアを頑張っているかたも素敵だと思います。

さとうたける
1989年3月21日生まれ。埼玉県出身。
2007年ドラマ初主演。以後、映画『るろうに剣心』シリーズ、『いぬやしき』『サムライマラソン』、ドラマ『半分、青い。』『義母と娘のブルース』などに出演。2020年には、『るろうに剣心 最終章』の公開が控えている。

『ひとよ』
11/8より、全国にて公開
©2019「ひとよ」製作委員会
【監督】白石和彌
【出演】佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟(千鳥)、佐々木蔵之介・田中裕子
どしゃぶりの雨が降る夜。「稲村タクシー」を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、子どもたちの幸せと信じて、夫を殺めた。15年後の再会を誓い、家を去った、こはる。そして心の傷を隠したまま大人になった長男・大樹(鈴木亮平)、次男・雄二(佐藤健)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹の元に、こはるが15年ぶりに戻って来る。

※本記事はアッププラス2019年11月号より一部抜粋して掲載しています

撮影/十万正人(NA-GEANNA)
スタイリング/岡部俊輔(UM)
ヘア&メイク/古久保英人(OTIE)
取材・文/高橋栄理子、山西裕美(ヒストリアル)

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