大ヒット小説『砕け散るところを見せてあげる』が、海外の映画祭で高く評価されるSABU監督を迎えて映画化。
主人公のどこにでもいる高校生・濱田清澄を演じる中川大志さんに、この印象深いタイトルの作品について、その魅力を語っていただきました!
清澄と自分の共通点を考えて演技は“自然体”で
――『砕け散るところを見せてあげる』というタイトルを最初に聞いたときは、どう思われましたか?
内容が想像できないタイトルだな、と思いました。「見せてあげる」だから、誰かが誰かに言っているわけじゃないですか。書店や劇場でポスターを見たら、間違いなく気になるんじゃないかなと思います。
――演じられた、高校3年生の濱田清澄は、どんな人物だと思って演じましたか?
清澄はひとことでまとめづらい男だと思います。というのは、「突出したことがない」、ってことなんです。クラスの人気者というわけではないけど、友達がいないわけではない。とにかく自然体なんです。1年生の蔵本玻璃をいじめから救おうとするわけですが、それがすごいことだとも思っていなくて、清澄からはごく自然に出たこと。その感覚を大事にしようとして演じていました。
撮影現場の本番にしか出せない瞬間が残せた
――石井杏奈さんとは、2016年公開の映画『四月は君の嘘』以来、約4年ぶり、3度目の共演で、とても安心感があったとのことですが、どういうときにその安心感が感じられましたか?
今回はとにかく自然体でいたかったんですが、それは清澄のキャラクターでもあるし、この作品の中で起きていることがそこにいる人たちの中の本当の出来事だと思ってもらわなくてはいけないから。今回、余計なことをそぎ落して、シンプルに演じることが僕のテーマだったんです。だから僕はやれるだけの準備をして、あとは撮影現場でカメラの前に立ったら何も考えない。そこで起きることが全てで、起きたことが映像に残る、ということを目標に挑んだんです。清澄と玻璃は影響を与え合う関係だったので、作品の中で玻璃がどういう状態で何を言っているかに全力で集中していました。石井杏奈さんも玻璃という役に、すごく覚悟を持って挑んでいて、僕と同じように現場に身をゆだねている感じがしたんです。どちらかのテンションが違うとうまくいかないと思うんです。撮影現場には本番にしか生まれない瞬間があって、それがきちんと作品の中に残せたんじゃないかなと思っています。
現実ならどうするべきかの、正解はない
――この作品のテーマは〝愛〞や〝感情〞で、衝撃的な展開も待っていますが、観るみなさんはどんなふうにこの作品に挑んで欲しいと思われますか?
絶対的な正義と悪、この作品にはそれがありません。自分にとっての正義が相手にとっての正義かどうかはわからない。玻璃は学校でいじめを受けますが、清澄がそれに介入することでさまざまなことが起こります。現実では目をそむけたくなるようなことが、作品の中では起きるかもしれません。観てくださる人の心を押しつぶす何かがあるかもしれない。でも、これが現実だったらどうするのが正解かは、ないんです。観てくださる方々に広い余白を残す作品だと思っています。
なかがわたいし
1998年6月14日生まれ。 東京都出身。
2009年、俳優デビュー。2019 年、NHK連続テレビ小説「なつぞら」に出 演し話題に。主演映画には2017年『きょう のキラ君』、2018年『虹色デイズ』、『覚悟は いいかそこの女子。』などがある。
『砕け散るところを見せてあげる』
【監督】SABU 【出演】中川大志、石井杏奈、北村匠海、原田知世、堤真一
近日公開
©2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会
大学受験を控えた高校3年生、濱田清澄(中川大志)は、嫌われ者の1年生・蔵本玻璃(石井杏奈)が、いじめを受けている現場を目撃する。その正義感から彼女を助けたのをきっかけに、次第に心の距離を縮まらせていく……。
※本記事はアッププラス2020年5月号より一部抜粋して掲載しています
撮影/カキモトジュンコ(パーシモン)
ヘア&メイク/堤紗也香
スタイリング/徳永貴士
取材・文/山西裕美(ヒストリアル)