「実家に帰ると、父が母になっていた」。
衝撃の冒頭で始まる、映画『おいしい家族』で、その事実にとまどいながら、受け入れていく主人公・橙とう花か を演じる、松本穂香さん。
作品に込められたメッセージを聞きました!
美容部員の橙花と島での橙花のメイクの違いに、注目を
――演じられた橙花は、東京で美容部員をしていますが、この作品にはメイクをするシーンがたくさん出てきますね。この物語でメイクはどういう意味を持っていると思いますか?
この作品で、メイク好きな男子高校生のタキが「自分はおかしいのかも」と悩んでいるん です。でも「キレイになりたい」と男性が思うことは間違いではない、自由なんだ、ということのひとつの例として使われているんじゃないかなと思います。あとは単純に、ふくだももこ監督が、キラキラして可愛いものがお好きなのもあると思います。衣装合わせのときも、「可愛い、可愛い」ってすごく楽しそうで。お若い女性監督ならではでした(笑)。
――作品中の橙花のメイクにも、『upPLUS』読者は注目すると思います。
東京で美容部員をしているときの橙花のメイクは、普段自分がしたことがないマックスにしっかり目です(笑)。東京での生活に疲れて、島に帰省したときのメイクは、かなりナチュラル。「メイクは魔法だ」というセリフが作品中にもありますが、本当ですよね。毎回メイクをしてキレイにしていただくと、自信が出てくる。美容部員としての橙花のメイクも、しっかりメイクにしていただいたからこそ、演じやすかったというのもあります。
〝家族〞だからこそ、すぐには受け入れられないこともある
――橙花が久しぶりに島に帰ると、家でお父さんが亡くなったお母さんの洋服を着て、台所で家事をしていたり、お父さんと結婚するという高校生の娘を連れた中年男性がいたりして、戸惑いますよね。橙花はだんだんと受け入れ始めますが、どこから心境の変化を出していったんでしょうか?
橙花が一番悲しかったのは、お父さんがお母さんになってしまったら、お父さんまでいなくなってしまう……ということ。でもお父さんの想いを聞いて、自分がお母さんになりたいくらいお母さんに強い愛を持っている、ということがわかって変化したんだと思います。最初は、お父さんがお母さんになる、男性と結婚するという、理解できないことを突きつけられ、混乱して飛び出してしまっただけだと思っています。
いろんな国や家族がいて、愛のありかたはさまざま
――この『おいしい家族』が伝えたかったメッセージは、なんだと思いますか?
監督とお会いしたとき一番最初に「これは愛の映画です」とおっしゃったんです。いろんな国や家族がいて、愛のあり方は自由なんだ、ということだと思います。世の中にはいろんな人がいて、いろんな問題がある。でもそれを否定したり、誰かを傷つけることは意味がないこと。みんなが自由で笑顔でハッピーなことが一番。そんなシンプルなことを教えてくれる作品だと思っています。
※本記事はアッププラス2019年10月号より一部抜粋して掲載しています
まつもとほのか
1997年2月5日生まれ。大阪府出身。
主演短編映画『MY NAME』で俳優デビュー。以後、TBS日曜劇場『この世界の片隅に』、映画『君は月夜に光り輝く』などに出演。11/15には『わたしは光をにぎっている』の公開も控えている。
『おいしい家族』
9/20 より、全国にて公開
©2019「おいしい家族」製作委員会
【監督・脚本】ふくだももこ
【出演】松本穂香、板尾創路、浜野謙太 ほか
都会での仕事や夫婦関係に疲れた橙花(松本穂香)は、久しぶりに実家の離島に帰ることに。そこで橙花は衝撃的な光景を目にする。父は亡き母の服を着て「父さん、母さんになろうと思う」という。さらに驚かせたのは、見知らぬ中年男・和生(浜野謙太)とその娘の女子高生・ダリア(モトーラ世理奈)が同居していた。「父さん、この人と家族になろうと思う」と言われ……。27歳の新鋭、ふくだももこが脚本と監督を担当。
撮影/鈴木希代江
スタイリング/李靖華
ヘア&メイク/尾口佳奈(KOHL)